兵庫教育大学「学校課題事例研究Ⅰ」にて元町映画館,元町商店街でのフィールドワーク、ディスカッションが開催されました。
「元町映画館ものがたり」を教材に、兵庫教育大学の吉田達弘教授がご担当されている「学校課題事例研究Ⅰ」にて元町映画館,元町商店街でのフィールドワーク、ディスカッションが開催され、元町映画館も学生のみなさんが鑑賞する作品の選定や、フィールドワーク訪問先のご紹介、ハーバーランドにある同校サテライトキャンパスでのディスカッションに参加させていただきました。
日頃から元町映画館に通っていただいている吉田教授と、事前に何度か打ち合わせをし、まずはどの作品を鑑賞していただくかを吟味しました。林支配人が推薦したのは、日帝時代に慰安婦とされた2人の少女の過酷な運命を現代とつなげて描く韓国映画『雪道』。元町映画館で夏に上映したドキュメンタリー映画『教育と愛国』は、教育現場から〈慰安婦〉の言葉と事実が消されようとする現実を突きつけましたが、教師を目指す学生のみなさんに『雪道』を観ていただき、映画の内容だけでなく、歴史が抹殺されようとしていることについても話し合う時間を持っていただきたい。そんな思いも込めて推薦した作品でした。
フィールドワーク当日は、早めに元町に到着し、思い思いに早めのお昼ご飯を食べていただいた後、12時より『雪道』を吉田教授と学生のみなさんでご鑑賞。その余韻を胸に、元町商店街周辺のフィールドワークを行いました。こちらも吉田教授と相談の上、学生のみなさんに知的好奇心を与える箇所を3箇所、巡っていただきました。
1.花森書林
「元町映画館ものがたり」刊行時には100冊をバースデーケーキに見立てて積んでいただき、書籍でもご紹介している花森書林さん。この日は、イシサカゴロウさんの「2021ふりかえり YEAR BOOK2021展」初日で、在廊されているイシサカさんにもご挨拶をいただいたり、店主の頓花慎太郎さんにお話を伺いました。本を買っても全部読む必要はないと、本に対する敷居を下げてくれるお話も印象的でした。本だけではなく、雑貨もあるお店を興味深そうに探検する学生さんたち。駆け足になりましたが、また訪れていただけると嬉しいです。
2.本の栞
次は、元町映画館から徒歩1分の「本の栞」さん。刊行当初から今も「元町映画館ものがたり」を取り扱ってくださっています。詩が好きだという店主の田邉栞さんの好みを反映し、詩集の取り扱いが多いのも特徴。この日は夕方に朗読イベントを控え、いつもとは違うレイアウトだったとのこと。学生のみなさんも自分たちと同世代の田邉さんのお話を興味深く聞いておられました。
3.まち活拠点まちラボ
そしてフィールドワーク最後の訪問は、こちらも元町映画館から徒歩数分の「まち活拠点まちラボ」です。元町商店街の新しいPVをディレクション、11月は元町映画館で開催の「神戸サメ祭り2022」関連トークショーの開催でもコラボしていただく、まちラボ担当スタッフ今地春乃さんに、まちラボについて説明していただきました。活用方法が無限大のまちラボ、今地さんこだわりの制作物(短歌ガチャガチャなど)もラボの中には溢れており、少し時間をとって、探索していただきました。
スーパーファミコンができる畳スペース。でも楽しんでいただけたようです。まちラボには街づくりに関する書籍が取り揃えてある他、全国の内容が充実したフリーペーパーも持ち帰ることができますよ。
ハーバーランドのサテライトキャンパスに移動してからは、学生のみなさんと、「元町映画館ものがたり」責任編集の江口が交流するディスカッションが行われました。
まず最初に江口の方から、この日のミニシアター体験について感想をお聞きすると、
「居心地がよく、ほっとした」「シネコンだと上映が反発されるような作品や、好き嫌いがある作品でも流せる」「映画の世界に入り込みやすい」「映画館の人とお客様との距離感がシネコンと違う」「『元町映画館ものがたり』を読んでいたので、手作り感や映画館の雰囲気をより感じられた」「シネコンよりもロマンが溢れるいい空間。ライブハウス感があって入りやすい」
と実に多彩な意見が寄せられました。人との距離が近い、落ち着けるなどの声を実際に映画館で鑑賞した後、直接学生のみなさんから聞けることは非常に意義のあることです。こちらからも、将来、先生として働く中で目の前の仕事に頭がいっぱいになってしまったとき、自分を取り戻し、リフレッシュできるようなみなさんのサードプレイスとして、ぜひ活用してほしいとお話させていただきました。
映画『雪道』に関しても、慰安婦問題だけでなく、戦争自体の理不尽さを描いているという声や、「慰安婦問題のことはほとんど知らなかったが、自分たちが調べないといけない」「韓国側から描かれていることで視点が広がった」「夢を追いかけられない子どもに寄り添うような教師になりたい」「戦争の体験を口にしたいけれどできない人も多いだろうし、その全てを拾えてはいないだろう」と、映画を通して体験したことの大きさや、慰安婦問題にこれからどう向き合っていくのかを真摯に考える意見が寄せられました。
映画は多様な社会を映し出す窓。ミニシアターはそんな映画に触れることができる場所であること、そして世界の様々な問題を考えさせてくれる映画があることを、体感していただけたのではないでしょうか。この取り組みが映画館を活用した教育のモデルケースになるのではないか。まさにそんな大きな一歩となるフィールドワークとなりました。映画鑑賞を学校の授業に取り入れ、フィールドワークを企画、実施してくださった吉田教授に心よりお礼申し上げます。そして、参加いただき、後日お礼状まで書いてくださった学生のみなさん、ご来館ありがとうございました!
元町映画館前にて、参加学生のみなさんと記念写真!
0コメント