ハラスメント、差別や偏見、女性どうしの連帯…映画の中の女性たちと出会う"女性映画”連続公開!


 「元町映画館ものがたり」第5章:10周年、街になりたつ映画館 その存在理由にて、「これからのジェンダーを映画で考える」というタイトルで2021年に入ってからの女性映画の上映や、合わせて開催したトークの模様をご紹介したが、あれから2年経ち、6月から7月にかけて女性映画を連続上映するプログラムが組まれた。

 映画館では、今年から番組編成担当になったスタッフ石田による各作品紹介コメント付きの掲示物を貼り出しているが、せっかくなのでそれのウェブバージョンとして、各作品の予告編と共に、石田のオススメコメントをご紹介したい。作られた国や年代も様々な女性たちの映画をぜひ楽しんでほしい。



『サポート・ザ・ガールズ』6/3-6/9

石田コメント

スポーツバーでマネージャーとして働くリサ(レジーナ・ホール)は客のセクハラ、オーナーの人種差別と毎日戦っている。「どこにでも存在する違和感」に立ち向かっていくリサたちを描く本作には、痛快さがありながらも、観終わって「楽しかったね!」と言えるような作品ではもちろんない。続いていく嫌な日常は、すぐには変えられない。ポスタービジュアルにもなっているこのシーンが何より最高!わたしたちは一人じゃない!



『私、オルガ・ヘプナロヴァー』6/17-6/30

石田コメント

実在したチェコ最後の女性位死刑囚、オルガ・ヘプナロヴァーの人生を基にした映画。「選択肢は自殺か、殺人か」。何が彼女を凶行に駆り立てたのか。サイコパスな殺人犯を描く映画と一味違うと感じたのは、オルガの幼さの残る言動や行動からなのか、愛情への上が行動原理になっているからなのか。カメラは執拗におるがの姿を追うし、オルガもこちらを見る。オルガが観ているわたしたちがこんな世界を作っているのだろうか。


『アシスタント』6/24-7/7

石田コメント

映画プロデューサーを夢見るジェーンはアシスタントとして映画会社に入社する。英語で匿名の女性を意味する”Jane Doe"から、主人公には”ジェーン”という名前がつけられている。ジェーンがその”社会”のしくみに気づいたときにこの物語はジェーンの物語からわたしたちの物語になる。緊迫した時間の続く87分。映画としては『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』に次ぐ位置付けでもありながら、今もどこかで”ジェーン”の声が黙殺されている。



『AFTER ME TOO』7/1-7/7

石田コメント

苛烈な#Me Too運動から数年、かき消された市井の人々の静かな抵抗を4人の監督が映し出したドキュメンタリー。それ以上に日本国内ではほぼ公開されておらず、今回は神戸YWCAと元町映画館の共催という形で上映することになりました!瑞々しい感性から描き出された本作は映像表現の手法もそれぞれ違った面白さがあるが、扱っているテーマは少しずつ違っている。映画を観て終わり、ではなく#Me Too運動の歴史、そしてそれからを勉強したいし考えていきたい。観た人同士でたくさん話し合って欲しい作品。



メーサーロシュ・マールタ監督特集 7/8-7/21

石田コメント

ハンガリー出身の映画監督であるメーサーロシュ・マールタ。本特集は初期作5本をレストア版で公開。どれも日本初公開!1975年、『アダプション/ある母と娘の記録』でベルリン国際映画祭金熊賞をとるも、今まで日本では紹介される機会がなかった。抑圧された状況下でメーサーロシュが描き出す女性たちの姿は、昔の時代に描かれたものだからではなく、今のわたしたちにこそ通ずるのでは。メーサーロシュの映画には常に「女性の選択」が描かれている。今の時代だからこそ再評価されるべき作品群のはず。



『人形たち~Dear Dolls』+『Bird Woman』7/15-7/21

石田コメント

4人の監督が、人形をモチーフに生きづらさを感じている女性たちを描き出す4編からなるオムニバス映画。4者4様の生きづらさ、そしてさまざまな解放、実験的な手法の作品も含まれる。本作の一編『Doll Woman』を手がける大原とき緒監督が企画・プロデュースも担当しており、上映では大原監督の『Bird Woman』を併映。こちらも秀逸。コロナ禍におけるマスク社会で鳥のマスクをつけた女性たちによる痴漢撃退運動が起こり…。暴力に暴力で争うことで生まれる危険性、歪んでいく承認欲求や正義感。現代のわたしたちに警鐘を鳴らす作品。



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