刊行にあたって


 神戸の映画ファンが作った元町映画館の10周年記念プロジェクトとして、2020年8月に一般社団法人元町映画館の社員による出版プロジェクトが発足しました。元町映画館設立前から同館の運営に携わってきた理事の住田明世と、最初は映画ファンとして、近年はプレスとして同館の10年を見続けてきた映画ライターの江口由美を中心に、映画パブリシストの岸野令子がアドバイザーとして参画。さらに、ボランティアスタッフとして開館時より各種印刷物イラストや周年記念グッズイラストをで手がけ、映画『花束みたいな恋をした』劇中イラストで映画デビューも果たしたイラストレーターの朝野ペコさんが表紙イラスト、そして朝野さんと同じく神戸gallery Vie絵話塾出身の駒井和彬さん(こまゐ図考室)に装幀をご担当いただきました。


 書籍では映画館全面協力のもと、スタッフや、映画関係者に取材を敢行し、設立構想から2021年8月の初製作作品配給と現在進行形のプロジェクトまで、多岐にわたって当館の動きを解き明かしています。映画産業誕生以来、戦争時代を除いで一番ドラスティックな変化を余儀なくされたコロナ禍については、臨時休館してから再開までの全4ヶ月の記録を現場の動きを中心に詳細に記載。再開後の2020年8月15日に森田恵子監督(『小さな町の小さな映画館』『旅する映写機』『まわる映写機 めぐる人生』)をお招きして開催した10周年記念トーク記録「これからの映画館のあり方を考える」では、2021年4月に急逝された監督のラストメッセージとなった貴重な言葉や写真を収録、映画館やスタッフに向けたあたたかい眼差しを感じていただけることでしょう。


 またスペシャルコンテンツとして、濱口竜介監督(『ハッピーアワー』『ドライブ・マイ・カー』)、元町プロダクション主宰の池谷薫監督(『蟻の兵隊』『ルンタ』)と林未来支配人による特別対談を収録。ミニシアターと映画制作者が目指すべき未来や、映画監督が根城の映画館を持つ意義など、長年積み重ねた信頼関係があるからこそ語り合える深い内容になっています。


 コラムではパルシネマしんこうえん、Cinema KOBE、Café Cru.(カフェクリュ)、花森書林と映画館に関係の深い場所をご紹介するほか、スタッフが思いを込めて執筆した「私の1本」や、社員による読み応えのあるコラムを揃えました。資料編では、元町映画館の年間売上、上位10作品を初公開。2010年代からコロナ禍の今までを振り返る「元町映画館のあゆみ」では、映画界の動きや神戸の動きもご覧いただけます。そして、今、京阪神で自主的に上映活動を行うまでに成長した映画チア部の誕生から、その歩みを振り返る座談会もご注目ください。


 刊行を記念し、元町映画館では濱口竜介監督の『PASSION』(2008年)と『THE DEPTHS』(2010年)を特集上映する「RYUSUKE HAMAGUCHI 2008-2010 Works PASSION/THE DEPTHS」を開催します。上映後には、濱口監督をはじめ、元町映画館のものがたりに登場された方や、ゆかりのあるみなさんをゲストに迎え、連日トークショーも開催いたします。書籍の先のものがたりを、みなさんと紡いでいけたら幸いです。


 最後に、初めての自主出版にご指導をいただき、ご尽力いただいた株式会社 神戸新聞総合印刷 西香緒理さんに感謝申し上げます。




こんな方にオススメ!

●ミニシアターのことが知りたい!

●元町映画館のことを知りたい! 

●映画館の仕事に興味がある!

●映画館を作ってみたい! 

●映画館の未来を考えたい!      

●コロナ禍の映画館の動きを知りたい!  

●2010年以降の神戸映画館事情を知りたい!

●京阪神ミニシアターのつながりを知りたい!

元町映画館ものがたり

元町映画館出版プロジェクト刊行の「元町映画館ものがたり 人、街と歩んだ10年、そして未来へ」特設サイトです。